心療内科のカウンセリングの方針

改善策をすぐに教えるのではなく、患者の深層心理を掘り下げる

負の感情や強いストレスに振り回されがちな昨今の現代社会では、心療内科を受診する人が多くなっています。では、心療内科医はどのようなカウンセリング方針のもとに患者と向き合っているのでしょうか。

たとえば人と会話するたびに極度な緊張を感じることが原因で、人と接するのが嫌になり心の病にかかってしまった患者がいたとします。カウンセリングで患者は「コミュニケーションの際に襲われる強い緊張感をどうにかしたいです」と相談することが想定されますが、ここで心療内科医は、緊張感を取り払う方法をすぐに教えない傾向があります。このような相談を受けた際に心療内科医は「そもそも、どうしてコミュニケーションの際に襲われる緊張感を解消したいのですか?」と質問して、患者の深層心理を掘り下げていくのです。そしてこのケースでは大多数の患者が「緊張していることが相手に伝わって、嫌われてしまうのがイヤだから」といった回答をします。

悩みを解消するための目的と手段の関係性を患者に理解させる

今回の事例のように会話での緊張感を払拭したい患者は、人から嫌われることを極端に恐れていることが多いです。すると、この患者にとって心の病を治すポイントは“どうやって人から好かれるか?”ということになります。つまり“緊張感を払拭したい”という目的を達成するためには、“人から好かれること”が目的を達成する手段になるのです。そして心療内科医は楽しい会話術や愛想を良くする方法を患者に提示します。“人から好かれること”という手段が満たされれば、“緊張感を払拭したい”という目的は自然に達成されるからです。 このように患者から「私は自分のこういう部分を何とかしたいです」という相談を受けたら、すぐに改善策を教えるのではなく「その部分を治したいのは何のためですか?」と質問して、目的と手段の関係性を患者に理解してもらうようにします。これが心療内科の基本的なカウンセリング方針なのです。